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研究報告会レポート

第5回物語マーケティング研究報告会レポート「ナラティブ・ブランディングの構図」

#いまマーケティングができること

第5回物語マーケティング研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:ナラティブ・ブランディングの構図
報告者:津村 将章(中京大学 准教授)
    櫻井 光行(尚美学園大学 教授)
    牧口 松二(株式会社博報堂 マーケティング戦略局 局長代理)
    和田 久志(株式会社電通 統合マーケティング・プロデューサー)
    岩井 琢磨(株式会社顧客時間 共同CEO 代表取締役)
    *所属は報告時点
日 程:2022年3月19日(土)16:30-18:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
 物語マーケティング研究会は、物語マーケティング理論と実践を研究テーマとし、研究者と実務家が共に取り組んでいる研究会です。研究会ではマーケティングにおいて活用される物語のうち、企業が主体的に管理・発信するコンテンツとしての「物語」(Story)だけではなく、顧客の「もの語り」(Narrative)に着目しており、2022年度より名称を「ナラティヴ・マーケティング研究会」に変更致します。
 
 今回の報告会では「ナラティヴ・ブランディングの構図」をテーマに事例研究について報告を行いました。
特に社会全体のデジタル化に伴い、顧客による語りは単なる情報拡散と言ったプロモーショナルな位置づけに留まらず、語りによってそのブランドの価値を形成し、さらにはブランド・コミュニティの形成を促す力を持つようになっています。そこで「ブランド・コミュニティ」という視座を持ち、その「コミュニティの形成を促す要素」としてのナラティヴの位置づけと働きを、いくつかのケースを通じて考察しました。これを通して、ナラティブ・ブランディングの構図を仮説として示すことを目指しました。
 
 まずアプローチとして「ナラティブが、同じブランドを好むという類似性でつながったブランド・コミュニティの形成に機能し、ブランディングにおける効果をもたらす」という視座を示しました。
 

*当日報告資料より
 
 次に前提となるコミュニティの理解として、「コミュニティとは、成員による共同関心を持つ社会的統一体である」という定義を示しました。そのうえで羽藤(2019)の定義から「コミュニティは『境界線』・『相互作用』・『共通の絆』によって形成される」こと、またそれらは「境界線が存在することによって、メンバーが特定の場に集まることができ、そこで相互作用が繰り広げられるようになる。相互作用が行われると、メンバーはほかのメンバーとの間により強い共通の絆を感じるようになる。共通の絆が強化されると、境界線を示すコミュニティ感覚のような心理適用沿いがさらに強化あるいは再生産され、メンバーは内と外をより明確に弁別して考えるようになる」(羽藤 2019)ことが説明されました。
 
 そしてこの理解に基づいて、ジレット・トヨタアクア・ゴルフ業界の「The First Tee」の取り組みを取り上げて、そのコミュニティ形成とナラティヴ機能の関係性を考察していきました。
 

ジレットのキャンペーン動画「We Believe: The Best Men Can Be」
https://www.youtube.com/watch?v=UYaY2Kb_PKIより)
 
 これらの事例考察から、事例間で共通するコミュニティ形成に対するナラティヴの機能を考察。次のナラティヴ・ブランディングの構図が、仮説として示されました。
 

*当日報告資料より
 
 そして津村先生より、今回の構図について「物語→語り→解釈という時間軸が重要となる。このため、このモデルにおいては、語り・解釈を通じて、何らかの成長性、変化(時間性)を含む(含ませる)ことを前提としたデザイン設計を考える必要がある」ことが考察として示されました。
 その後、多くの実務を担っている参加者から、実務面でのナラティヴを取り入れることの難しさや、そのための組織構造などについての考えや課題が示され、研究会リーダーである内田和成先生を交えた活発な意見交換が行われました。最後に来期からリーダーを務める津村先生から総括を頂いて、報告会は無事に終了しました。
 前回に続いて「リサプロ祭り」はオンライン開催となりましたが、オンラインだからこその時間や距離に縛られない発表を行うことができました。また発表者と参加者の距離が近く、共に研究テーマについて考えて頂けるという大変有意義な発表会になりました。
 
(文責:岩井 琢磨)

 
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