第3回消費者行動と価格戦略研究報告会レポート「SaaS・サブスクリプションの価格戦略」 |
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第3回消費者行動と価格戦略研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:SaaS・サブスクリプションの価格戦略
- 解題
太宰 潮(福岡大学 商学部 准教授) - SaaS・サブスクリプションの価格戦略
高橋 嘉尋(プライシングスタジオ株式会社 代表取締役 CEO)
相関 集(プライシングスタジオ株式会社 役職取締役 COO) - パネルディスカッション
上田 隆穂(学習院大学 経済学部 教授)
高橋 嘉尋(同上)
相関 集(同上)
太宰 潮(同上)
日 程:2022年3月19日(土)16:30-18:00
場 所:Zoom使用によるオンライン開催
【報告会レポート】
本報告会では、近年存在感を増しているSaaSとサブスクリプション・サービス(以下サブスク)におけるプライシングで活躍中のプライシングスタジオ株式会社から代表取締役の高橋氏、取締役COOの相関氏をゲストにお迎えしました。
はじめに高橋氏からSaaS・サブスクについての現状と従来ビジネスとの違いについて紹介がなされ、サブスクでは失敗事例が多いことから、ビジネスの捉え方自体を変える必要があり、顧客の利用状況を把握することと既存サービスや商品の改善や見直しが行われることなどの説明がなされました。
次に継続・解約がビジネスに与える影響の大きさを具体的な数字で説明され、解約の多いこれまでの理由から、顧客が求めるサービス内容と企業が提供するそれの不一致が大きな理由となっていることが示されました。その不一致を埋めるため、提供する商品もしくはサービスを、中核となる市場価値の高いリーダー(例えばファストフードのハンバーガー)、付属的であるが多くの顧客から求められるフィラー(例えばファストフードのポテト)、一部顧客だけに求められるキラー(例えばファストフードにおけるアイスクリーム)と分ける枠組みを用いて、顧客が求める商品・サービスを把握することや、どこにサブスクの仕組みを設けるべきか、が紹介されました。また価格是正が行われているようすが、実際のNetflixや度重なる値上げをしている例などと共に示されました。
当日の様子
後半は相関氏より、SaaS・サブスクのプライシングで検討すべきことや陥りやすい課題が紹介されました。定期便やボックスタイプのサブスク、定額のデジタルコンテンツ配信、IoT製品やSaaSなど、それぞれの事業例と課題、またその解決策の例が具体的に示されましたが、いずれも顧客を知り、顧客が享受するバリューベースのプライシング、顧客の価格調査の必要があり、その手法として代表的なPSM(Price Sensitivity Meter/Measurement)が紹介されました。
後半のディスカッションにおいては、まず学習院大学の上田隆穂先生より、1960年以降の売上高営業利益率や好不況の波と価格の移り変わりから、上がり下がりを繰り返しているが、企業の長期的利益の観点からサブスクが、比較的短期的利益の観点からダイナミック・プライシング(DP)が登場してきた様子が解説され、これからはサブスクとDPのハイブリッド型も広まる可能性があることが示されました。
質疑応答においては参加者からも非常に活発な議論が交わされ、プライシングのみならず、有形財サブスクサービスを提供する上での顧客データ取得の方法や、B2B契約体系において気を付けること(利用金額を分離した契約をしておくこと)など、具体的かつビジネスインパクトがとても高い、有意義な議論が交わされ、あっという間の時間が過ぎました。
年度末でお忙しい中ご登壇頂いた高橋さん、相関さん、ディスカッションに加わって頂いた上田先生、また議論頂いた参加者の皆さま、どうもありがとうございました。
当研究会は価格を扱う唯一のリサーチプロジェクトです。関心のある方はぜひお声がけくださいませ。
(文責:太宰 潮)