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研究報告会レポート

第5回マーケティング/PRテクノロジー研究報告会レポート「食品D2Cベンチャー『マッスルデリ』の最新PR事例 ― パーソナライズ化とコラボ広報戦略 ―」

#いまマーケティングができること

第5回マーケティング/PRテクノロジー研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:食品D2Cベンチャー「マッスルデリ」の最新PR事例 ― パーソナライズ化とコラボ広報戦略 ―
日 程:2023年3月18日(土)10:30-12:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
今回の報告会では、以下2パートにて構成された。
1. 食品D2Cベンチャー「マッスルデリ」のパーソナライズ化とコラボ広報戦略の取り組みついての講演
2. 講演を受けての対談及び会場との質疑・ディスカッション
 
1. パーソナライズ化とコラボ広報戦略。その取り組みと成果。
山岡 大介 氏(株式会社Muscle Deli 執行役員CXO)

 
マッスルデリ事業とD2Cパーソナライズ化の流れ
・「Muscle Deli」と「YOUR MEAL」2ブランドを展開
・商品の企画製造から販売まで自社で担当するD2Cモデル。ユーザーのニーズにあわせた食をサブスクで届ける。
・2017年開始、累計販売数150万食突破。
・Muscle Deliは、ダイエットやボディメイクに最適なコースが用意されており、30〜40代の健康やからだづくりをしたい男女から支持されている。加えて、トップアスリートや芸能人も利用している。
・YOUR MEALは、回答したユーザーデータを分析システムにより、食事や栄養、最適なメニューを提案するもので、組み合わせは11億パターンある。
・YOUR MEALが目指すのは、美容や睡眠、宗教や嗜好性まで。様々な課題やニーズに対する食を開発し、ターゲットを拡大していくことである。
 

 
コラボ企画と実績
・スタートアップPRとしての課題
少ないリソースで、定常的なメディアリレーションができない
→ 解決策の1つとして、他社と力を合わせてファンを取り込むコラボPRの企画・実施・検証サイクルでカバー
・Muscle Deli PRチームのミッション・クレドを設定。それに沿う形で様々なコラボ企画を実施
 

 
PRコラボ企画のつくりかた
・試行の回数を増やすことが重要:考えるよりまず実行、やり続けること。
・試行錯誤の精度を上げるためにはマーケティングのフレームワークを活用すること(例:STP)。
 
PRやること多すぎ問題とツール活用による効率化
・広報・PRには5つの機能があるが、これを1人ですべて行うのは困難
・対応するメディアも多数あり、取捨選択が必要である
 そのため、Slack、IFTTT、Twitter、Googleアラートを連携して掲載情報の自動収集をしている
・その他プロジェクト管理ツールや自動化ツールを活用し、効率化を図っている。
・やること・やらないことを決めることが必要
 
ネットワーキングによる副業PR人材の活用
・ネットワークが多い人や企業と仲良くなることで、類似性の高い人へのアクセスがしやすくなり、精度の高い企画を思いつきやすくなる。
 
2. 対談及び会場との質疑・ディスカッション
ファシリテーター:藤崎 実(東京工科大学 専任講師)

 
Q.マッスルデリではPRは何人でやってるのか?
A.山岡さん1名。あとは、副業として手伝ってもらっている人が1名。
 
Q.企業経営とPR業務はどのようにしてリンクさせているのか?
A.経営者がPRに関する理解が深いことに加え、山岡さん自身が執行役員CXO(最高体験責任者)として経営にコミットしている
 なお、ミッションやクレドはPRチーム以外の他チームでも作っている。
 
Q.パーソナライズにおいて外部の健康情報(Appleなど)の活用については検討していないのか?
A.今後検討していきたい。なお、EC基幹システム(ecforce)の活用はすでにしている。
 
Q.外部とのコラボは相手方との兼ね合いがありスケジュールがうまく行かないことがあると思うが、どのように対応しているのか?
A.毎月10〜20くらいの企画提案をしている。
 実際は当初の予定通り進んでいるわけではない。状況に応じて臨機応変にその場で何が最適なのかを考え実行している。
 
Q.コラボが失敗した場合にどういう構えでいるか?
A.重要なのは経営者と結果をどう握るかが重要。当初の想定通りに行かなくても他の視点で結果が出ることもあり、その場合の報告の仕方を工夫している。
 
Q.コーポレートブランディング構築に関して、広報の価値をどのようにつくるか?
A.企業の外から見た視点を入れる意味ではPR人員は必要ではないか。
 
Q.パーソナライズで得られた情報を将来に対する成果を提示する仕組みを構築することはできるものなのか?
A.習慣化が必要だというロジックはあるので、ステップメールや同梱物を活用して継続した施策はしている。
 ボディメイクの場合、「食事8割、運動2割」と言われるほど食事が占める割合は高いが、ただそれを伝えても、現実の人間の意思はなかなか変えられないという事実もあり、ただ情報を提示すれば良いというものでもないのではないか。
 
Q.マッスルデリのユーザー拡大の要因は?
A.有名人が利用していることを発信してくれたことやコロナ禍による生活様式の変化も起因である。
 
Q.山岡さんは普段どういったものを情報源としているのか?
A.Facebook、Twitterなどでつながった人の意見や、日々のトレンドなど、ソーシャル上の話題を常に追いかけている。
 

 
【研究報告会を終えて】
 私自身過去にユーザとしてマッスルデリの購入経験があるサービスであり、最近特に様々なところで名前を聞くことも多くなったと感じていたが、それらの取り組みが1人のアイデアが起点となっているということにまず驚いた。
 山岡氏がこれまでメディアの立ち上げや趣味を生かしたビジネスの展開など様々な職務経験によってネットワークを広げ、自社だけで企画を考えるのではなく、外部に広くアンテナを張り巡らして外部とのコラボレーションを数多く企画するという姿勢は、「ひとり広報」となって企業の中で何をすればいいか困っているという広報・PR担当にとって新しいロールモデルになるのではないか。
 
(文責:藤原 健太郎)

 
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