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第6回オムニチャネル研究報告会レポート「外食産業におけるオムニチャネル・DX戦略」 |
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第6回オムニチャネル研究報告会（春のリサプロ祭り・オンライン） > 研究会の詳細はこちら
テーマ：外食産業におけるオムニチャネル・DX戦略
- 解題
近藤 公彦（小樽商科大学大学院 商学研究科 教授） - 吉野家のオムニチャネル＆DX戦略
田中 安人（株式会社吉野家 CMO） - パネルディスカッション
田中 安人（同上）
近藤 公彦（同上）
中見 真也（神奈川大学 経営学部 准教授）
丁 明（明治大学大学院 経営学研究科 博士後期課程）
日 程：2023年3月18日（土）13:00-14:30
場 所：Zoomによるオンライン開催
【報告会レポート】
本研究報告会は、3部構成で実施されました。まず、第1部は本研究会のリーダーである近藤公彦教授（小樽商科大学大学院 商学研究科）より「外食産業におけるオムニチャネル・DX戦略」というテーマの解題として、日本の外食産業をリードしてきた吉野家は、創業124年という長い歴史の中で「牛丼」を国民食として「うまい、やすい、はやい」をモットーとしながら、伝統と革新を実践し続けてきた。吉野家は顧客起点でこのモットーを展開する手法としてオムニチャネル戦略を位置づけるとともに、従業員満足の向上をベースに独自のDX戦略を遂行している企業であると紹介。
第2部は田中安人氏（株式会社吉野家 CMO）より、「吉野家のオムニチャネル＆DX戦略」と題してご講演頂きました。吉野家は1899年日本橋の魚河岸からスタートし124年。魚河岸の舌の肥えた客層に対していかに、おいしく、はやく、やすく提供することを考え抜いてきました。それは、オペレーション効率を追求した馬蹄形の店舗設計の開発、1970年からのチェーン化、100円バーガー戦争、BSE騒動とその都度、困難な状況にも知恵を絞って立ち向かってきた歴史でした。外食は一般的にQSC（Quality、Service、Cleanliness）と言われるが、コロナ禍を経てテイクアウト需要の大きな伸びから、最大の敵はコンビニエンスストアであると認識。外食は今後、「ロボットレストラン」と「人型レストランの戦い」になるといわれている中、吉野家は、経営理念である「For the people」から、QHA（Quality、Hospitality、Atmosphere）を掲げ、人が人らしくある外食を目指すとのこと。そのため、人がやらなくてもいいことはどんどんデジタルの力を借りて効率化していく方針をご説明いただきました。その内容は、コロナ前からの施策であるC&C戦略（クッキング アンド コンフォート：いわゆるテーブル席業態のマクドナルド形式の店舗、通称‐黒吉野家）による出店攻勢で女性客、ファミリー層の顧客の獲得戦略というベースとなる戦略に加え、コロナ禍によりテイクアウト比率が80％超となる現象を踏まえ、戦略を練り直すというものでした。そのため、今年3月より「グループデジタルテクノロジー推進本部」を設立し、経営環境の激しい変化に機動的かつ能動的に対処しつつ、デジタル技術の効果的な活用を推進することでDXを実現し、既存のビジネスモデルの変革に繋げるというものです。この組織によって、国内グループのクラウドアプリ環境を整え、次世代基幹システムによるデータベースの統合、グループのシステム統合による仕入れの統合によるシナジーの創出、店舗のバックオフィスの統合などにより、顧客に「顧客感動満足」を提供するために、すべてデータを一元管理することで顧客の要望に応えると同時に、人が人らしく働ける環境を整えることで外食に優秀な人が来てもらえるようにするというもので、長期経営ビジョンとして「ひと・健康・テクノロジー」をキーワードに飲食業の再定義を行い、力強い成長を目指すというものでした。
第3部のパネルディスカッションでは、田中安人氏、近藤公彦教授に加えて、中見真也氏（神奈川大学 経営学部 准教授）、丁明氏（明治大学大学院 経営学研究科 博士後期課程）による意見交換が行われ、吉野家のオムニチャネル・DX戦略は、デジタル化が目的化している企業が多い中、人を大事にするDXが1丁目1番地で、デジタルを自分たちのビジネスにどう活かすか、どうしたら働きやすい環境になるかという論点を、コロナ禍における外食産業の在り方も含め、深堀しました。
（文責：杉田 慎一郎）
