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研究報告会レポート

第6回ナラティヴ・マーケティング研究報告会レポート「ナラティヴ・アプローチ・ブランディングの構図」

#いまマーケティングができること

第6回ナラティヴ・マーケティング研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:ナラティヴ・アプローチ・ブランディングの構図
報告者:津村 将章(神奈川大学 経営学部 准教授)
    増田 明子(専修大学 商学部 教授)
    櫻井 光行(尚美学園大学 スポーツマネジメント学部 教授)
    牧口 松二(株式会社博報堂コンサルティング 取締役COO)
    和田 久志(株式会社電通 統合マーケティング・プロデューサー)
    大野 幸(株式会社資生堂 Global Brand Unit Senior Manager)
    岩井 琢磨(株式会社顧客時間 共同CEO 代表取締役)
    *所属・肩書は実施時点
日 程:2023年3月18日(土)14:45-16:15
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
 ナラティヴ・マーケティング研究会は、マーケティングにおけるナラティヴ(物語・語り)が果たす機能・効果を研究し、そのメカニズムを可視化することにより、実践での活用手法を導くことを目指す研究会です。2022年度より名称を「物語マーケティング研究会」から「ナラティヴ・マーケティング研究会」に変更しています。
 今回の報告会では前回から引き続き「ナラティヴ・アプローチ・ブランディングの構図」をテーマに構造化を進め、これに伴う事例研究について報告を行いました。
 
StoryとNarrative、そしてBrand Communityとの関係
 最初に定義として、ブランディングにおけるStoryとは「戦略的メッセージ(ブランド・ビジョン、顧客との関係、組織の価値観や事業戦略などを明確化または強化するメッセージ)を伝えるあるいは支える物語」(Aaker 2019)であることを説明。そこには「主体と客体の不同性」「完結した意味を内包するコンテンツ」「生成・伝達という授受的な関係性」が定義されているという解釈を示しました。
 
当日報告資料より
当日報告資料より
 
 これに対してNarrativeとは「広義の言語によって語る行為と語られたものをさす」(やまだ2021, p.151)とされ、「読者はもの語りに新たな意味を共同生成させる、積極的な参与者であり、もの語りの意味を変容させる行為主体でもある」(やまだ2021,p.182)ことを説明。そこには「主体と客体の同一性」「完結しない意味を生成する行為」「参与・共創という共同的な関係性」が定義されているという解釈を示しました。
 
当日報告資料より
当日報告資料より
 
 Narrativeにおいては、主体と客体は共同体(Community)において対等な立場で参与していると視ることから、次にBrand Communityの定義を確認。羽藤(2019,p.37-38)より「『境界線』『相互作用』『共通の絆』がコミュニティの成立要素」であることを説明し、その要素の関係性を図のように示しました。
 
当日報告資料より
当日報告資料より
 
 以上を踏まえ、心理的コミュニティであるBrand Community形成においてNarrativeがどのように位置づくのかを、当研究のフレームワークとして提示しました。
 
当日報告資料より
当日報告資料より
 
 研究会では、多くの支援者を獲得しているブランドは、これらの構造を既に理解し、戦略的にブランディングのアプローチに取り入れているのではないかと考えました。そこで①NarrativeとBrand Communityの構造仮説を上記の図におき、②それを通して成功ブランドの事例を見ることによって、③Narrative Branding Approachの要点を可視化することを事例研究の目標とし、YAMAP・NIKE・Patagoniaというスポーツ領域において成功を納めている3社の観察を行いました。
 
YAMAPのCommunityを活性化させる仕組み(YAMAPサイトより) Patagoniaの相互作用を生むアンバサダーの仕組み(Patagoniaサイトより)
画像左より、YAMAPのCommunityを活性化させる仕組み(YAMAPサイトより)、Patagoniaの相互作用を生むアンバサダーの仕組み(Patagoniaサイトより)
 
 これらの事例観察から、事例間で共通するCommunity形成要素の定義について考察が示されました。
 
当日報告資料より
当日報告資料より
 
 最後に当研究の実践に対する示唆と共に、今後の研究において実践での成否を分ける要因が何かをさらに探求する必要があることが示され、報告会は無事に終了しました。
 
当日報告資料より
当日報告資料より
 
 研究会としてはこれまで取り組んできたCommunityとNarrativeという視座が構造として可視化され、非常に有意義な報告会となりました。これを踏まえてさらなる構造の確認と、成功要因の分析を検討しています。
 
(文責:岩井 琢磨)

 
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