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研究報告会レポート

第3回デジタルトランスフォーメーション研究報告会レポート「デジタル・トランスフォーメーションのパスと求められるケイパビリティ」

#いまマーケティングができること

第3回デジタルトランスフォーメーション研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:デジタル・トランスフォーメーションのパスと求められるケイパビリティ
日 程:2023年3月18日(土)10:30-12:00
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
 本研究会では、これまで企業のデジタル・トランスフォーメーションを実現するダイナミック・プロセスモデルの提示を目指して議論を重ねてきた。その成果は、ダイナミック・ケイパビリティ研究の組織能力に関する知見と、サービス・ドミナント・ロジック研究での価値共創の議論を統合し、プラットフォームの有無と対象となるステークホルダーの広狭の組み合わせによる4象限を類型化し、各象限の移行からなる枠組みとして提示された。しかし、企業の取り組みでは、それ以外の移行プロセスの可能性も考えられるため、その可能性の検討についての報告を行った。
 まず参考として、デジタル企業が新しい分野でのサービスを導入・発展させていく際の進め方として、Google・楽天のサービスと、両社のそれらのサービス開発の進め方が取り上げられた。Googleで月間の利用者数が多いサービスの中でも、YouTubeやAndroidのように外部企業を買収したケースや、GmailやGoogle Mapsのように買収した企業のサービスや技術がサービス開発の上で、重要な役割を果たしているケースが存在する。また、楽天でも証券、銀行、トラベル、カードのように、自社でサービス提供を行う中で、同業他社を買収して展開を加速させてきたことから、買収という選択肢が果たす役割が見出された。
 次に、デジタル化の選択肢としての買収が、ジョイントベンチャーや、自社内での取り組みからのスピンオフと共に挙げられている先行研究もあることから、デジタル化を進める既存企業の中で、買収という選択肢を用いてきたウォルマートとアシックスのケースが取り上げられた。
 

 
 ウォルマートのデジタル化については、2016年のjets.comが知られているが、それ以外でもこの10年以上の間、同社は様々なデジタル関連の買収を重ねてきた。そしてjets.comを買収する5年ほど前から、インナーソースを積極的に取り入れ、素早い開発を進めてきたことが、同社社員のカンファレンスでの発言から確認された。アシックスについても、2016年にランニングアプリケーションを提供するフットネスキーパー社の買収を行い、そのボストンの拠点をアシックス・デジタルとして様々なデジタル化に取り組んでいるが、同時期には社内内IT改革を実施して迅速な開発・実装・運用を進めていた。また両社に共通する点として、競合への対抗の必要性(ウォルマートは対アマゾン、アシックスの場合は、同時期に競合のスポーツブランド各社のデジタル化やフィットネスアプリ買収)や、10年単位で見たときの株価の右肩上がりのトレンドが指摘される。
 これらの点から、既存企業のデジタル化のプロセスの一つとしての買収と、その条件としての内部要因としての自社のアジャイルなシステム開発能力、外部要因としての同業他社との競合状況の可能性が指摘された。
 
 本研究会では今年度も引き続き、企業のデジタル・トランスフォーメーションにおけるプロセスに焦点をあて、そのパスや必要とされる能力に関する論理の精緻化に取り組んでいく。
 
(文責:今井 紀夫)

 
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