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研究報告会レポート

第21回プレイスブランディング研究報告会レポート「プレイス・ブランディングの成果を読み解く」

第21回プレイスブランディング研究報告会(オンライン) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:プレイス・ブランディングの成果を読み解く
講演:地域研究を花ひらかせるに向けて―「地域プラットフォームの論理」から
講演者:長尾 雅信 氏(新潟大学 人文社会科学系 准教授)
    山崎 義広 氏(駿河台大学 経済経営学部 准教授)
ファシリテーター:徳山 美津恵 氏(関西大学 総合情報学部 教授)
日 程:2023年6月22日(木)19:00-20:30
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
 第21回プレイス・ブランディング研究報告会では、本研究会の企画運営メンバーである新潟大学長尾雅信氏、駿河台大学山崎義広氏から、研究成果として2022年に上梓された『地域プラットフォームの論理―プレイス・ブランディングに向けて―』(有斐閣)をもとにプレイス・ブランディング研究の進め方について報告がなされました。
 長尾先生・山崎先生が、どのような経緯で「地域プラットフォーム」といったキー概念にたどり着いたのかといった書籍の内容や、地域を研究対象としていく上での苦労話や分析アプローチの選び方、地域に関する書籍を出版していく上での工夫など、地域を対象とした研究で成果を上げていくために、参加者それぞれの立場から議論が交わされました。
 

 
 長尾先生によると地域ブランディングの主体には、自治体に限らず多様な主体が存在することが示され、多様な主体による協創をどう捉えるか、行政が主導するトップダウン方式の地域ブランディングではないボトムアップ方式の地域ブランディングが可能であるか問題提起がなされました。
 地域ブランディングの先行研究では、主体は所与の存在であるか、自治体だけが地域ブランディングの主体であるか、自治体以外の主体は単なる利害関係者か、地域ブランディングは動態的かといった問題点が複数あることが示されました。長尾先生は、地域ブランディングに関する現場を調査研究するなかで、「まちづくりはひとづくり」との現場の声に注目しました。
 アクターのマーケティングは、「自らの目的を達成するうえで必要な組織や個人(アクター)を“顧客”とみなし、彼らのニーズを満たすことで、その自発的協力をうながす」(小林2016)ものとして捉えています。このアクターの概念を手掛かりに、地域ブランディングには、私企業との関わり方をどのように行うか、ビジネスプラットフォームに偏らない「交わりの舞台」を形成できるか課題が存在し、その解決にボトムアップ方式の地域ブランディングの場としての「地域プラットフォーム」の必要性に辿り着きました。
 長尾先生・山崎先生が、「地域プラットフォーム」の概念を体系化するにあたり、きっかけになったのは、2015年に電通の若林宏保氏(現横浜商科大学教授)の呼びかけにより調査研究を進めた「地域」から「場所」へのブランディング概念の転換でした。後にこの研究成果は、『プレイス・ブランディング―場所を作る仕事―』(有斐閣)として上梓されました。
 

 
 「場所」のブランド論として体系化された「センス・オブ・プレイス」研究をふまえ、本書では長尾先生・山崎先生・八木先生を中心に、量的研究と質的研究を組み合わせた混合研究法により「地域プラットフォーム」の実体について調査がなされました。
 新潟県小千谷市では、外部人材の活用が地域ブランディングにどのような影響があるのか、ソーシャルキャピタルの観点から住民に対する質問票調査とインタビューによる調査がおこなわれました。また、価値創出・向上型の広域連携としてのIRPB調査では、新潟県と福島県の間にある八十里越を事例に、主体間の連携を歴史文化資産が橋渡しを行い、地域ブランディングの形成につながることが紹介されました。また、山崎先生からは、埼玉県横瀬町の「地域プラットフォーム」形成に関する調査の実体と工夫について紹介されました。
 講演後は、「センス・オブ・プレイス」と「地域プラットフォーム」の概念の関係性、地域ブランディングの固有の問題である主体=担い手をどう探すか、「地域プラットフォーム」形成の際に主体間の価値観共有をどのように行うか、地域研究を進める際の工夫、「地域プラットフォーム」の形成主体としてのDMOの可能性、小規模自治体を対象にした地域ブランディングの手法などアカデミアの視点と実務家の視点双方から活発な議論が交わされました。
 

 
<プレイス・ブランディング研究会Facebookページ>
https://www.facebook.com/placebranding2019/

 
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