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研究報告会レポート

第13回インダストリー・イノベーション時代のブランディング研究報告会レポート「CES2024でのトレンド変化とブランドプラットフォームへの視点」

第13回インダストリー・イノベーション時代のブランディング研究報告会(オンライン)
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テーマ:CES2024でのトレンド変化とブランドプラットフォームへの視点
 

  1. 第1報告「CES2024に見る最先端テック企業のブランド戦略」
    朝岡 崇史(株式会社ディライトデザイン 代表取締役 / 法政大学大学院 客員教授)
  2. 第2報告「インダストリアルイノベーション時代のブランディング研究」
    森 一彦(京都先端科学大学 国際学術研究院 教授)

 
日 程:2024年3月7日(木)19:00-20:30
場 所:Zoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
 第1報告では、過去10年間、CESが開催される米国ラスベガスに出向き、定点観測を行っている朝岡がCES2024において大きなインパクトを与えたシーメンス、ロレアル、ウォルマートの3社のKeynote(基調講演)の内容を紹介しながら最先端テック企業のブランド戦略のあり方について報告した。(その概要については一覧表を参照)。生成AIというゲームチェンジャーの登場により、企業の製品やサービスは単なる顧客の課題解決にとどまらず、「自然言語によるAIとの対話」「パーソナライゼーションを基本としたオリジナルコンテンツの提供」という形での顧客体験(CX)刷新=カスタマーサクセスの提供という形で大きな進化を遂げようとしている。従来、企業は近未来の予測に基づき、目指す姿(ビジョン)からバックキャストして経営計画を実現する手法を採用してきた。しかしVUCAの時代はむしろ逆転の発想で、企業の社会的な存在理由である「パーパス」からスタートして、テクノロジーの進化や事業環境の変化を敏感に「センシング」しながらフォアキャストの発想でアジャイルかつ大胆に提供価値を変容させていく方が強いブランドを構築できる可能性が高まるのではないかという課題意識が朝岡から提起された。
 第1次報告を受けて第2報告では、3つのkeynote企業に対して「プラットフォーム」と言う視点からのを分析を試みた。プラットフォームに関しては正反背中合わせの評価があるため、ややプラットフォームに対して批判的な視点も取り含んだ「プラットフォーム資本主義」Nick Srnicek2022が指摘する5つのプラットフォームの成立に対する分類から、それぞれシーメンス=インダストリープラットフォーム、ロレアル=プロダクトプラットフォーム、ウォルマート=コマースプラットフォームと言う枠組みからその事業展開をプロットした。また、補足として「企業が独自のプラットフォームを築く方法」Wichman,Wiegand,Reinatz,HBR2022Decから非テック企業での戦略展開を辿った。さらにプラットフォーム形成での全体的な特徴として、1)事業でのエコシステムが形成され、2)質の異なるイネブラーとのコラボレーションが重なり合い、3)そのことで事業が従来の枠を超えて越境するという事業展開への認識が示された。
 さらにこうした3社におけるプラットフォーム形成でのブランディングへの視座として、コトとしてのブランド理解を提示した『進化するブランド』2022石井淳蔵(神戸大学名誉教授、流通科学大学名誉教授)からの視野を援用し、以下の点が指摘された。
1)自己生成するブランドついての考察として、「パーパス」という輪郭による事業領域の構造化がKeynote3社にも見受けられる。
2)今日ではデジタル化により産業の業態の垣根を越えた事業融合が見受けられ、従来のようなはっきりとした市場の輪郭が薄れている中で、さまざまな経済外価値の要素に対してパーパス(存在意義、目的)を介して内在化し、その枠組みへバウンダリーな線引きとすることで異なる業態をブランドの傘に収斂する展開として理解できる。
3)ブランディングでは顧客による認知システムをベースとしながらも、その一方で企業によるパーパス起点の活動システムから上塗りされる展開がプラットフォームでの事例として検討されるべきではないか。
 

 
(文責:森 一彦・朝岡 崇士)

 
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