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研究報告会レポート

第36回プレイス・ブランディング研究報告会レポート「地域のみかた ― クリエーターと地域の新たな関係 ―」

第36回プレイス・ブランディング研究報告会(複都市カンファレンス:福岡会場)> 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:地域のみかた ― クリエーターと地域の新たな関係 ―
講 演:マイナスをプラスに転換するスイッチの探し方
講演者:中野 伸哉(工房ラパロマ主催 / イラストレーター)
司会者:山崎 義広(松山大学 准教授)
日 程:2026年2月28日(土)14:00-15:20
場 所:福岡大学およびZoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
講演の様子 今年度のプレイス・ブランディング研究会のセミナーでは「地域×イノベーション発想の最前線」をテーマとしており、今回の第36回プレイス・ブランディング研究報告会では、地域のみかた ― クリエーターと地域の新たな関係 ―について、中野 伸哉(工房ラパロマ主催 / イラストレーター)氏に「マイナスをプラスに転換するスイッチの探し方」と題してご報告いただきました。
 
 はじめに中野氏から農産品のブランディングに携わることになった背景について説明がありました。国内外の有名雑誌のイラストを手掛けてきた中野氏が国東半島に移住し間もない頃、工房を運営しているという噂を聞きつけて、美味であるにもかかわらずブランドとして認知されなければ取引が成立しないという悩みを抱えたミカン農家が尋ねてきました。中野氏は農家の熱意に応え、「温故蜜柑(おんこみかん)」でブランディングに成功しました。その後、「国東半島岸田蜜柑」、「訪花の星」と様々な農産品のブランディングを手掛けます。中野氏の手法は、特性が伝わりにくい食べ物、無農薬のために虫によって傷がついた柚子、必ずしも知名度が高いとはいえない地域で生産されるミカンなど、一般にはマイナスの側面に目が向きやすいものに着目し、文脈をとらえ直してストーリーに乗せることでプラスに転換するというものです。
 
講演の様子 次に、その思考に気づかせてくれた自閉症の息子さん(中野マーク周作氏・陶芸家)との関係と、デザインに関する知識を基礎とした実践手法について説明がありました。世間の常識から捉えるとマイナスに見えるものでも、「あばたも靨(えくぼ)」と魅力を探してプラスに転換する方が、その効果は大きいといいます。また、そこで探すのは、ダイヤモンドや金の延べ棒ではなく、原石を探すということでした。その原石にストーリーをつけることで、お宝になるというブランディングの考え方です。他にも両合棚田や過疎地域の再生アドバイザーとして活躍の場を広げています。中野氏は、地域活性というのは、他からそこへ人が来るというイメージを持ちやすいが、地元の人々が元気になるというのも活性であり、どちらかというとそちらの方が大切であるとの考えを示しました。
 
 以上、クリエーターと地域の関係として、いくつかの農産品ブランディングの取組みを紹介いただいたのち、クリエーターから見る地域の可能性について報告いただきました。その後、フロアとの質疑応答が行われ、一般の人が見逃してしまう「原石の見つけ方」や「ダイヤモンドや金の延べ棒の転換の仕方」を中心に活発な議論が展開されました。
 今回の事例は、人口減少を前提とした地域の在り方や東京一極集中に悩む地域に対して、ともすればマイナスに捉えられがちな地域資源の文脈を読み替え、発想力とストーリー性によって新たな価値を創出する可能性を示すものであり、地域の魅力形成を考えるうえで多くの示唆を与えるものでした。

 
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