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第48回価値共創型マーケティング研究報告会レポート「価値共創マーケティングの実践と成果」 |
第48回価値共創型マーケティング研究報告会(複都市カンファレンス:大阪会場)> 研究会の詳細はこちら
テーマ:価値共創マーケティングの実践と成果
日 程:2026年2月28日(土)12:30-13:50
場 所:武庫川女子大学 中央キャンパスおよびZoom使用によるオンライン開催
【報告会レポート】
挨拶:村松 潤一(岐阜聖徳学園大学)
価値共創マーケティングに関する研究も、その成果をどう捉えるかという課題が残っている。すなわち、価値共創によって得られた文脈価値をそのままプライシングに結び付けるか、あるいは交換価値に引き戻して考えるかということである。とりわけ、後者の場合、文脈価値と交換価値の関係を明らかにする必要がある。今回の研究報告会では、このあたりについて実務ではどのように考えることができるかについて議論できればと考えているとの趣旨説明があった。
報告「価値共創マーケティングの実践」
藤岡 芳郎 氏(畿央大学)
藤岡先生は『価値共創マーケティングの深化』第8章の「価値共創型企業システム」の内容に基づいて、多様な主体を対象とした顧客共創による戦略実行のかたちを示しました。顧客の生活時空間という共創の場で生まれる文脈価値を軸に企業の経済時空間を変革し、共創なしには到達できない成果を生むことを、アクション・リサーチと事例を通じて明らかにできるとすることで、続く講演にその具体を委ねました。
講演1「地域活性化(中小企業支援)と価値共創 -教育というテーマでの共創の場を創出-」
白谷 将規 氏(摂津市商工会)
白谷氏は、摂津市商工会での実務を通じて、多くの中小企業が単独では強みを十分に発揮できず、事業成長や雇用安定、地域での認知に課題を抱えているという認識をお持ちでした。また、だからこそ必要な直接支援に加え間接支援が重要だという考えに至ります。そこで実践において教育委員会と連携し、キャリアを切り口に企業と学校をつなぐ「キャリア教育応援企業等登録制度」を創設しました。
同制度を通じて取り組んだダンススクールは、学校連携や大阪万博での発表機会を得て入会者増につながったほか、製造業は教育現場との接点から発明クラブ創設や企業研修依頼へと発展しました。これらの成果はキャリア教育アワード受賞やオープンファクトリーの活性化にも波及し、企業のテストマーケティングや販路開拓にも寄与しています。すでに成果が多方面に広がる一方、その全体像を把握しきれないといった点が新たな課題であり、ご講演を通じて共創の持つ自走的な力と可能性が示されていました。
講演2「価値共創戦略の実践と成果」
竹中 雄一 氏(ブリコリーブ代表 / 大阪産業大学 経営学部 特任講師)
竹中氏が関わる「もりねき学生部」は、15大学・2高校の学生が参加し、企業との共創を通じて新たな挑戦を行うコミュニティです。企業の課題に対し学生が提案する共創的コミュニケーションから活動が始まり、キャラクターブランディング支援では、グッズ制作や公式LINE、地域イベントを活用した情報発信を展開していきました。
その結果、30〜40代の母親層という顧客の日常生活の文脈が明確になり、地域住民参加型のワークショップやキッズ向けプロジェクトへと発展していきました。これらの活動は、地域での企業認知や顧客接点を創出するとともに、企業には継続的な発想源と関係性を、学生には責任感や地域づくりへの志向をもたらしました。学生の主体的成長という文脈価値が、企業成果と結びつく点にこうした事例の特徴がありました。
ディスカッション
白谷 将規 氏(摂津市商工会)
竹中 雄一 氏(ブリコリーブ代表 / 大阪産業大学 経営学部 特任講師)
藤岡 芳郎 氏(畿央大学)
ディスカッションを通じて、価値共創の成否は企業の恣意性を抑え、学生や地域主体の主体性を尊重できるかにあると確認できたといえます。共創は創発的な文脈価値に支えられるのであり、短期的な思惑では持続しません。中小企業が集積する地域では、地域社会との互恵的関係が共創を促進するといえるのであり、こうした取り組みから浮かび上がるのは、マーケティングは市場取引以前の顧客の生活時空間に目を向け、文脈を読み解く必要があるということです。本研究会はその探究を、今後も深めて参りたいと存じます。
(文責:今村 一真 茨城大学 人文社会科学野)

