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研究報告会レポート

第9回マーケティング・ツールとしての知的財産研究会レポート「競合分析の手段としての意匠データの利用」

#いまマーケティングができること

第9回マーケティング・ツールとしての知的財産研究報告会(春のリサプロ祭り・オンライン)
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テーマ:競合分析の手段としての意匠データの利用

  1. 競合分析の手段としての意匠データの利用と限界 ― 外観のコンバージェンスの測定を一例に ―
    吉岡(小林) 徹(一橋大学イノベーション研究センター 講師)
  2. 報告者及び参加者によるディスカッション

日 時:2022年3月19日(土)14:45-16:15
場 所:Zoomによるオンライン開催
 

【報告会レポート】
 今回は「競合分析の手段としての意匠データの利用と限界― 外観のコンバージェンスの測定を一例に ―」と題し、一橋大学 イノベーション研究センター 専任講師の吉岡(小林)徹先生から、意匠データを使った主要既存研究をほぼ網羅しつつ、意匠データの可能性と限界について非常にわかりやすくご発表頂きました。
 

 
 まず、意匠データの有用性の観点で、「製品分野」の情報、デザイナーの活動が客観的に把握できる「創作者」の情報などが存在する点についてご説明され、創作者情報を用いた分析例として、アップルやソニーにおいてはデザイン組織の特性が違うとする先行研究等をご紹介頂きました。
 また、意匠権の利用状況については、国際的なデザイン賞受賞製品150製品では、過半数が意匠登録済みであるというご自身の研究結果や意匠制度を利用すると利益率が平均で5~8%高い傾向があるという最近の論文についてご説明頂きました。
 企業レベルのミクロの分析例として、米国の意匠特許の引用情報を使った各社の製品開発戦術が推定できるというご自身の自動車産業を対象にした研究結果や引用ネットワーク情報を基に外観のデザインをクラスタリングした先行研究についてご説明頂きました。
 さらに、よりマクロなレベルでの分析例として、「既存の外観との類似が購買傾向を高める」、とする先行研究、とくに「既存製品のアナロジーは新製品需要の障壁を下げる」、というご自身の研究の内容についてご説明頂きました。「斬新なデザインこそが購買意欲を高めるのではないか」と考えがちな人が多い(私自身がそう考えていました)と思われる中、非常に興味深いお話と感じました。
 また、他の製品分野カテゴリーへの直接の影響度として、で近年は電子計算機、ICT機器の影響力が増加していることを定量的に示す研究成果についてご説明頂きました。
 これまでのまとめとして、意匠データを使った分析の可能性としては、創作者情報を利用することで、競合他社の外観のデザインの開発体制を推知できる点、外観のデザイン開発のチームの組み方の成果への影響を分析できる点をご指摘頂くとともに、引用情報の利用の可能性として、競合他社の製品開発の特徴を可視化できる点、外観のデザイン開発のトレンドを知ることができる点をご説明頂きました。
 他方、限界として、意匠登録は分野によっては利用されていない点(例えば、エレクトロニクス分野では多数の登録があるのに対し、自動車や医療機器は限られた数となっており、アパレル製品・かばん等にはほとんど登録がない)についてご説明頂くとともに、企業によっても利用傾向が異なる点、日本の意匠の引用情報は少ない点などをご説明頂きました。
 特許データを用いた先行研究が多い中、実は意匠(ただし、米国では意匠も特許の一種)のデータも非常に有用であり、様々な示唆を得ることができると感じました。

 
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