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研究報告会レポート

第5回消費者行動と価格戦略研究報告会レポート「サブスクリプション・サービスの変遷 ― 定期通販からD2C、価格改定の時代を踏まえて ―」

第5回消費者行動と価格戦略研究報告会(春の三都市リサプロ祭り:福岡会場) > 研究会の詳細はこちら
テーマ:サブスクリプション・サービスの変遷 ― 定期通販からD2C、価格改定の時代を踏まえて ―
日 程:2024年3月9日(土)11:00-12:20
場 所:福岡大学およびZoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
 今回は、本研究会が近年取り組んでいるメインテーマのひとつであるサブスクリプション・サービス(以下サブスク)に焦点を当て、通販の聖地である福岡での三都市同時開催ということもあり、地元福岡でサブスク専門のコンサルティングを提供している(株)ペンシルから、D2C事業部ゼネラルマネージャーの関洋祐氏をゲストにお迎えして開催されました。
 研究会リーダーである太宰の解題の後、まず太宰から、サブスクが定期通販と同義と捉えられることを紹介し、九州・特に福岡が通販の聖地であること、なぜ通販の聖地となったのかについて報告が行われました。原産地でないにも関わらず明太子の産業集積を確立した、パイオニアである(株)ふくやによる明太子製法等の共有(現在で言うところのオープンイノベーション)からはじまり、通販のパイオニアであるキューサイ、やずやなどの企業間の横のつながりが強く、ノウハウの共有が頻繁になされること、その上で従来の定期通販は、多くのケースが実質的には月次の反復購入であることなどが説明されました。
 
関 洋祐 氏 続いて関氏の報告が行われました。
 先のパイオニア・ふくやの90年代におけるオンライン販売のホームページ制作受注を先駆けとして、通販のコンサルティングを行うようになっていったペンシル社が定義づけた従来の定期通販と現在のサブスクとの違いの枠組みが紹介されました*。
 
*参照:ペンシル社WEBサイト「サブスク事業の成功を支援する「サブスクコンサル」を提供開始、独自研究でサブスクを定義し体系化
 
 サブスクは永遠のベータ版であり、顧客視点で変化・カスタマイズ性を有すること、そして、取引・購入だけでなく、顧客とつながっていること、コミュニケーションに特徴があることが示され、その事例としてサントリーウェルネス社のサービス「comado」や、大手通販サービスのライフスタイル提案コンテンツ事例などが紹介されました。事例からは、現在のサブスクでは直接的な商品に関わることだけではなく、ライフスタイルそのものの情報であったり一見商品とは関係のない情報であっても、顧客の閲覧が集まり、顧客への情報提供やコミュニケーションが重要であることが解説されました。
 
 関氏のお話のあとに太宰より、企業⇔顧客間のインタラクティブなコミュニケーションだけでなく、コミュニティなどにおけるP2P、顧客同士のコミュニケーションなども行われることを含め、PineⅡ&Gilmoreによって1999年に示された経験経済の有名な枠組みの先には、「コミュニケーション経済」を考えるべきではないか、という提起がなされました。
 
 続いて太宰より、サブスクにおいて近年価格改定(主に値上げ)が行われるが、顧客の価格の意識の弱さを指摘し、サブスクの価格改定が今後の研究余地であることと、顧客満足が非常に高く、応援消費の域に達していると価格改定が受け入れられる例などが紹介されました。
 その後会場からの質問に対して活発な議論が交わされ、時間が終了となりました。関さん、ご参加いただいた皆様、ありがとうございました。
 
(文責:太宰 潮)

 
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