リサーチプロジェクト
研究報告会レポート

第7回ナラティヴ・マーケティング研究報告会レポート「コミュニティビジネスにおけるナラティヴ ― YAMAP語りの変遷 ―」

第7回ナラティヴ・マーケティング研究報告会(春の三都市リサプロ祭り:福岡会場) > 研究会の詳細はこちら
 
テーマ:コミュニティビジネスにおけるナラティヴ ― YAMAP語りの変遷 ―
 

  1. コミュニティ・ビジネスと語り
    津村 将章(神奈川大学 経営学部 准教授)
  2. YAMAP語りの変遷
    岩井 琢磨(株式会社顧客時間 共同CEO 代表取締役)
    大野 幸(株式会社資生堂 Global Brand Unit Senior Manager)
  3. 「事業とナラティヴ」の研究における論点
    松井 剛(一橋大学 教授)
    津村 将章(同上)
    岩井 琢磨(同上)
    大野 幸(同上)

 
日 程:2024年3月9日(土)13:00-14:20
場 所:福岡大学 2号館およびZoomによるオンライン開催
 
【報告会レポート】
 はじめに津村からこれまでの本研究会の振り返りと、本研究会におけるナラティヴ・アプローチについて説明が行われた。
講演の様子 次に岩井氏・大野氏からYAMAP語りの変遷として、株式会社YAMAP代表取締役CEOの春山慶彦氏の語り(ナラティヴ)の変遷と題して発表が行われた。株式会社YAMAPに着目した理由は、1.前回の発表でもブランド・コミニティの事例として取り上げられていたこと、2.多くのメディアで取り上げられており新聞や雑誌、Youtube公開されている対談などデータの入手が比較的容易であること、3.創業時から現在まで春山氏という同一人物が繰り返しメディアに登場しており、時系列での事業の変遷が観察出来るからであった。
 春山氏のメディア発言等を可能な限り文字起こしを行い(全国紙・専門誌・雑誌、WEB掲載記事、動画等合計38本)、春山氏の語りについて整理を行ったところ大きく3つの領域が確認できた。1点目は「社会課題の解釈(Challenging Community Issue)」である。YAMAPはどのような社会課題を重要と考えているのか、その社会課題に対してどの様に解決してゆくのかについての語りである。2点目は「事業価値の創造(Creating Competitive Value)」である。YAMAPのアプリが利用者にどのように役に立つのかについての語りである。3点目が「顧客行動の変化(Changing Customer Behavior)」である。YAMAPのサービスを通して顧客がどのように自己実現が出来るのかについて語っている。
 
 語りの変遷
 
 また、報告では春山氏の語りを鉄板ネタという観点からも分析を行った。鉄板ネタとはインタビューの際に出現することの多いエピソードである。春山氏の例では、イヌイットがGPSを使って漁を行っていたこと、東日本大震災によって起業を決意したこと、スペインで巡礼地を30日ほど歩いたことなどである。これらは自身の経験や考えと事業をつなげる理由として、語られることが多い。
 時系列の分析では上記の3つの内容が、それぞれどの時点で語られていたのかについて焦点を当て報告を行った。創業期においては、「顧客行動の変化(Changing Customer Behavior)」についての語りが多い。しかし、YAMAPアプリが100万ダウンロードを超えたあたりから、「事業価値の創造(Creating Competitive Value)」や「社会課題の解釈(Challenging Community Issue)」の語りが増えていることが明らかとなった。
 「事業とナラティヴ」の研究における論点では、松井氏にも参加いただきディスカッションを行った。春山氏の語りの守備範囲の広さや、前日に行われた春山氏へのインタビューなどについての話題が中心となり閉会した。
 
(文責:津村 将章)

 
Join us

会員情報変更や、領収書発行などが可能。

若手応援割
U24会費無料 &
U29会費半額
member